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世襲という連綿と続く制度に見る日本

過去の日本の貴族階級の官僚組織の中には、血縁による「世襲」という変われない制度がずっと続いていた。これに対して武士によるものは家を中心とする世襲が作り上げられた。ここでは血よりも組織の継続が重んじられた。それが日本社会に今でも連綿と続いている。

世襲の最たるものは天皇制である。万世一系の天皇という思想には天孫降臨神話によって、天皇イコール神の子孫という形で、中国の皇帝などの徳なき者が天の命令によって新たに(革)するという革命という交代の原理のないものが作り上げられた結果である。その制度は平安時代の藤原不比等による大宝律令の制定により「太政官制度」という日本独特の官僚制度による政治支配の体制になって完成し、天皇は君臨すれど統治せずという形になったものである。藤原氏の権力維持のために貴族制度は世襲という変われない原理で強化されていった。これ以降、天皇制は南北朝の一時期と、明治時代に作り上げられた国家神道時代を除いて、天皇が表に立つ政治形態はなかったのである。過去の日本において、女性は侵される者、男性は支配するもの侵すものという原理により、天皇家の女性たちは殆どが結婚をせずに仏籍に入るなどした事により、かたち上は天皇の父系的な連続があった事になっているので、それが現在の男系天皇の議論になっている。今日的な感覚で男系とか女系など大きな問題にすること自体に意味がないのに、それを大真面目に取り上げている政治家や知識人といわれる者の時代錯誤には驚かされる。しかし現実とはそんなもので、なかなか変化ができない証拠のようなものだとして見れば、それはそれで興味深く理解できる。

武士の台頭以降は、世襲というものも家というものに変わってゆき、江戸時代にもそれは連綿と続いたが、実質的には御家人の売買制度とか婿養子や組織内の足高制度によって身分制度は固定化されたものから、かなりの柔軟性を持った形に変化する事で、家という世襲制度は能力主体のものに変化されていった。これは中国やその影響を受けた朝鮮などの儒教に基づく科挙制度と異なり、柔軟性と現実的な対応という意味では科挙制度の形だけの登用制よりはるかに優れた形で機能したのである。科挙制度は、その試験の難しさと儒教だけを真理とした偏屈な形によって、実質的には新しいものに対応できない社会になっていっただけのものになっていったのである。明治維新で、日本だけが西欧型の科学技術を取り入れて近代化に成功した背景はここにある。しかしながら、天皇中心による国家覇権主義的な思想は、結局、朝鮮や中国の侵略から太平洋戦争に至って破綻していった。そこにあったものは軍部官僚というものによる、天皇の絶対性を利用した硬直的な考えによる破綻である。

戦後、民主主義というもので180度の価値観の転換が持ち込まれたが、実質的に世襲というものは天皇制にも残り、企業や官僚制にも家という組織の連続性の原理で残り、民間においては経済的な成功を導いたものになったものの、政治制度的には官僚制度による支配体系を作り上げる結果となり、結局、国の制度が硬直化していくことで経済的な成功も続くことなく現在に至ってしまっている。今の日本は完全な官僚社会主義の国に成り果て、民主主義というものは機能しない国になっている。さらにバブルがはじけて、経済的にも行き詰まりを見せた事から、米欧型の経営形態が無批判に受け入れられることで、過去の組織を主体とした経営形態が捨てられる中で、国民生活は効率性だけを求める社会の中で弱者が増え続けていく社会へと変わってしまっている。非正規雇用の増加は過去の組織を主体にした世襲制の否定にもつながり、短期的な利益を求める米欧型の経営で国民生活が圧迫される結果になっている。組織主体とは単なる年功序列というトコロテン式のものではなく、内部での競争による人材育成と共に発展する思想である。その正しい理解なしに、安易に米欧型の自由経済という言葉だけで経営形態を変えても何も生まれない。官僚支配による制度の硬直化と共に、過去の経営制度の正しい理解を無くした事で、結局、民間による日本経済はその停滞から抜けられることができなくなってしまっている。

世襲という長きにわたるわが国の歴史を学び、何が長所であって、何が問題かを考える事が大事である。いたずらに日本的なものを排除せず、ただ米欧のものだけが正しいとする態度を改めなければならない。組織の中で個人が埋没することなく、経営陣に非があれば武士の思想にもあった諫言などが機能するものにすれば、それは西欧型の内部告発などと異なる生産的な制度になるはずである。過去から連綿と続く歴史という重みの中で制度を見直すことは大事なのである。西欧が好きなものに対して言えるとすれば、それは英国型の経験主義とでも言えばよいのだろう。我々の歴史の経験を大事にしよう。

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